地域

町の中心でクロモジを叫ぶ。愛媛県・久万高原町の5人の男子たち

上浮穴郡久万高原町。町主催のクロモジセミナーが開催されました

クロモジセミナー_愛媛大学医学部附属病院教授_伊賀瀬 道也氏

久万高原町は、名峰石鎚山を有する高原の町。往年のテレビドラマ『東京ラブストーリー』の主役、カンチの出身地です。当時から、都会(=恋人役リカ)とは反対の、自然の魅力に満ちた町だったことが想像されます。

この町の中心にある久万高原町産業文化会館でクロモジセミナーが開催されました。舞台に立ったのは地元の高校生とOB、愛媛大学医学部附属病院の教授、伊賀瀬道也氏。きっかけは、5年前。ある男子高校生達とクロモジとの出会いでした。

地元の上浮穴高校には森林環境科があります。クロモジ研究を始めたのは2015年。当時の校長森田桂子先生は、町の豊かな森林を活かす学習を試みました。様々な樹木の中でもクロモジが面白く感じたそうです。その慧眼に感服します。

5人の2年生がクロモジ研究チームを結成(冒頭写真左から白川 凛太郎さん、宮内 永さん、田中 智也さん 坂本 知彌さん、山之内 恭介さん)。生態を調べ、精油を作り、クリームなどの製品化を進め、更にちょうどその頃町で開かれたハーブサミットにも参画。生態調査から製品化、世の中への発信まで一連の経験を積むことができました。クロモジの魅力と社会に関わることの面白さを知った彼らは、クロモジを介護の現場で活かすこと、町の名産品にすることなど、クロモジで町に貢献することを夢見ながら卒業します。

卒業後、一度町を出た彼らでしたが就職は町へUターン。それぞれの仕事や学業をこなす中、伊賀瀬教授の感染症対策とクロモジの抗ウイルス作用についてのセミナーが開かれることを知ります。セミナーを主催する町の応援もあり、5人も参加することに。当日は町長の挨拶で幕をあけました。

セミナーでは高校での活動紹介と共にクロモジの魅力を紹介。現役高校生も登壇して現在の活動、精油を採る様子やwebでの情報発信の様子を発表。地元のクロモジ事業者もブースを出展し、クロモジサミットの様相を見せました。セミナーの様子は地元のメディアでも報道され、久万高原町のクロモジの知名度アップにつながりました。

若者に帰って欲しいなら、帰りたくなることを

ロビーのブースには大きなクロモジ
ロビーのブースには大きなクロモジ
久万高原野草茶プロジェクト_展示
出展の様子

初代クロモジチームは高校時代にクロモジと関わった記録を紹介し、自分たちは“これで町に帰りたくなった”と伝えました。「子どもの頃、大人に町に帰れと言われたけれど、正直なところなぜ帰らなければならないか分からなかった。今の子ども達も同じだと思う。ただ帰れというだけでなく、帰りたくなるような町にするために行動することが大切だと思う」と締めました。行動を伴う熱い思いに会場からは拍手が起きました。

5年前に始めた高校の取り組みが、町の未来を本気で考える若者を育てました。とても意義深いことだと思います。研究をしてきた5人組にはもちろん、それを支えた教育関係、クロモジ関係、自治体の方々に敬意を表させていただきます。
なお、セミナーの取材にあたりまして松山市でハーブのあるくらしを提案されているタッジー工房の井上泉さんに多大なご協力をいただきました。お礼を申し上げます。。

今も続く、高校生とクロモジ

久万高原町の中心で クロモジを粉砕
久万高原町の中心でクロモジを粉砕する現役高校生 田川さん

クロモジの研究を始めた森田先生は、初めはクロモジに限らず森の樹木を活かすことを考えていたところ、香りの良さ、製品化の面白さなどを感じてクロモジに集中したそうです。地元の森林組合と連携したり、補助金を獲得して蒸留機を購入したり、一緒に山に登って採取したり、陰日向になって5人の活動を支えてきました。そして今回お会いすることができなかった当時農場長の橋本孝之先生は森の専門家。お二人のご尽力があってのクロモジ研究でした。

両先生が異動された後もクロモジ研究は引き継がれ、今も現役高校生が研究を続けています。今は田所恭介校長先生、森林環境科の河渕智一先生に見守られ、3年生は13名。その内、クロモジを研究しているのは今回のセミナーでも発表された田川詩月さん。4人の下級生と研究を進めています。クロモジを研究したのはたまたま先輩に声をかけられたため。歴史が長く、地元で開催されるハーブのイベントや産業まつりに参加できること、少人数のため自分で決めて自分で行動しないと何も進まないことが楽しいそうです。今は香りのよいろうそくを作るべく研究中。お香づくりから始めて試行錯誤を重ねています。

卒業した後は大好きな柿の農家になるために農業大学に進みたいとのこと。クロモジを通じて学んだことを活かし、道を切り開いていってくれることでしょう。
地元の特性を活かしながら、しっかりと目標をもった生徒が育っていく環境が羨ましく思いました。今後のクロモジラブストーリーに期待が持たれます。